トップ > 病気の知識 > 呼吸器疾患 > 睡眠時無呼吸症候群
睡眠時無呼吸症候群


呼吸がとまってる!?
睡眠時無呼吸症候群とは
日本人では、約2000万人がいびきをかいていると言われています。 いびきには、深酒をしたときや風邪で鼻の通りが悪くなっているときに起こる問題のないものと、 何らかの原因でいびきが慢性化して心身にさまざまな影響を与えるものがあります。 その1つが、睡眠時無呼吸症候群です。
睡眠時無呼吸症候群の人は、目覚めが悪く、日中の眠気が強くなったり、注意力が散漫になったり、夜間のトイレの回数が増えたりします。
睡眠中の血中酸素飽和度を測定してみると、重症患者さんでは通常の50%台の飽和度しかないことがあります。 これは、エベレストの頂上に立ったときの血中酸素飽和度とほぼ同等です。
睡眠時無呼吸症候群は心身に影響を及ぼしますが、ただの疲れだと思ってしまう人が少なくありません。
睡眠時無呼吸症候群チェック
以下の8項目でチェックしてみましょう。
合計が11点以上だと睡眠時無呼吸症候群の疑いが強いと思われます。
採点方法 眠くなることが多い:3点 時々眠くなる:2点 まれに眠くなる:1点 決して眠くならない:0点

- 座って読書しているとき
- テレビを見ているとき
- 人がたくさんいる場所で座って何もしていないとき
例)会議中や映画を見ているときなど - 車に乗せてもらっているとき(1時間くらい)
- 午後横になって休憩しているとき
- 座って誰かと話しているとき
- 昼食後静かに座っているとき
- 運転中、渋滞や信号待ちでとまっているとき

睡眠時無呼吸症候群の危険性
また、高血圧や心疾患などの生活習慣病とも関わりがあり、本人の生命を蝕むばかりか、 他の多くの生命を奪う悲惨な交通事故を起こす原因になります。 2003年の山陽新幹線運転士の居眠り事故でも明らかなように、 交通事故や労働災害など社会的影響の大きい悲劇を引き起こす危険性が隠れているのです。
原因
いびきは上気道の空気の通り道が狭くなることで起こりますが、睡眠時無呼吸症候群もこれと似たメカニズムです。気道を狭くさせる要因には、次のようなものもあります。

- 肥満による首部分の脂肪の増加
- 首が太くて短い人
- 舌の付け根や軟口蓋(鼻と喉の境の 部分)の気道への落ち込み
- 小顎症(顎が小さい)、顎の後退
- 扁桃肥大
- 鼻の構造的な問題(鼻すじの彎曲、鼻が低い)
これまでは、「睡眠時無呼吸症候群=肥満の人がなるもの」と考えられてきましたが、 最近では肥満でなくても睡眠時無呼吸症候群になることが分かっています。 これには日本人特有の顔、特に顎の形が関係していると言われています。
「顎が小さい」とは欧米人のように下あごが前に出ておらず、むしろ後ろに引っ込んでいる方のことです。 実は、日本の睡眠時無呼吸症候群患者さんの約30%がこの顎が小さいことが原因によると言われています。 顎が小さい方はもともとの気道の面積が狭いために、ちょっとした体重増加でも無呼吸になる可能性があります。 最近では、食生活の変化で顎のラインがスマートな若い方が増え、小顔ブームとなってきましたが、 このような方は、特に体重増加には気をつけないと睡眠時無呼吸症候群になる可能性があります。
診断・検査
寝ている間の状態はご自分ではわかりにくいので、主に起きている時の状態について伺います。 起床時の頭痛の有無や昼間の眠気の程度、既往歴、鼻の状態などについて、また夜間のトイレの回数などについてもお尋ねします。

【簡易検査】
呼吸、酸素濃度などを記録する機械を自宅へ持ち帰り、口と鼻につける呼吸センサーと体内の酸素濃度を調べるセンサーを 指に取り付けて行なう検査で、就寝時に装着し測定していただき、結果を医療機関で解析します。機械は翌日ご返却いただきます。 結果により、次の終夜睡眠ポリグラフ検査を行なっていただく場合もあります。

【終夜睡眠ポリグラフ検査】
呼吸状態に加えて睡眠状態を総合的に調べる検査で、一泊入院で行ないます。 脳波、呼吸状態、動脈血酸素飽和度、体位、いびきなどの結果を総合的に判定し、 睡眠時無呼吸症候群だけでなく、睡眠時無呼吸症候群に合併するむずむず足症候群やぴくぴく足症候群などを調べることができます。
治療
睡眠時無呼吸症候群の治療には、CPAP治療(経鼻的持続陽圧呼吸療法)、マウスピースなどがあります。
【CPAP治療】

圧力を加えた空気を鼻から送り込む
ことで、気道の閉塞を防ぐ治療法。
鼻に取り付けた専用マスクから、気道に空気を送り込み、気道を広げて呼吸の通りを確保する治療法です。 高い安全性も認められており、世界的にも普及している方法です。 医療機関から機器の貸し出しを受け、自宅で治療を行なうことができます。
中等症以上の場合、健康保険の適用になります。 健康保険で治療を行なう場合には、毎月の外来受診が必要になります。 3割負担の患者さんの場合、1ヶ月の自己負担は5000円程度になります。
【マウスピース】

下あごを前方に数mm
突き出してかみ合わす
ように固定することで、
閉塞を防ぐ治療法。
睡眠時無呼吸症候群患者さん専用のマウスピースをつける治療法です。 いびき症や無呼吸の程度が軽度の場合に適用されるのが一般的です。 下あごが上あごよりも前に出るようにマウスピースで固定することで、気道を広くします。 この治療法は2004年から保険適用になっており、自分に合ったマウスピースを歯科で作ってもらいます。
いずみの病院では、簡易検査・終夜睡眠ポリグラフ検査とも実施が可能です。
検査の結果、治療が必要と診断された場合には、CPAP治療を行なっています。
症状に心当たりのある方、まずはご自宅でできる簡易検査で、ご自身の睡眠の状態を調べてみませんか。
内科 吉井和也