トップ > 病気の知識 >  脳・神経疾患 > 高次脳機能障害

高次脳機能障害

病気(脳血管障害、脳症、脳炎)や事故(頭部外傷)によって脳が損傷されたために、 認知機能に障害が起きた状態を、高次脳機能障害といいます。

損傷を受けた部位によりさまざまな症状が現れます。 認知症と似た症状がみられますが、治療法などが異なるため全く別の疾患とご理解ください。

主な症状

注意障害
ぼんやりして、周りの人や事象を認識できない
記憶障害
日時・場所・人の名前などが覚えられない
失語症
会話が困難、成り立たない
失認
見聞きしたこと、人の顔などを認識できない
失行
簡単な動作が適切にできない
地誌的障害
慣れているはずの道が分からない
半側空間無視
片側に置かれたものを認識できない
半側身体失認
麻痺を認識できない
遂行機能障害
見通し・アイデア・計画性などの欠如
行動と情緒の障害
依存的になる、年齢より幼くなる

正しい診断と早期治療が重要です

診断には、CTやMRIだけでなく、言語聴覚士や作業療法士、臨床心理士による認知機能検査、 神経心理学検査などさまざまな検査が必要です。

発症から1年後までに適切な治療を開始すれば、著しい改善が期待できますが、 その後は回復が鈍り、2年以上経過すると固定してしまいます。 そのため、前述の症状がみられた場合は、早めに脳神経外科を受診することが重要です。

高次脳機能障害をとりまく現状

治療として手術と内服が選択できますが、現在のところ確立された治療法はありません。

そのため、社会復帰を目指したリハビリテーションが中心となります。 課題を与えて注意力を促し集中力を高める訓練や、メモや録音機をつかって記憶力を補助する訓練、 運動を伴ったトレーニングなどを行います。

高次脳機能障害は、患者さん本人が自覚していないことが多く、 また外見上、障害があることが分かりにくいため、周囲の理解を得にくく、社会生活を行う上で障害となります。 そのため、精神的に苦しまれる患者さんやご家族が多くいらっしゃるのが現状です。

よりよい生活のために

2006年に診断基準が発表され、高次脳機能障害の認知が高まり、適切な治療を受けられる環境が整いつつあります。

また、高次脳機能障害は広義の精神疾患とされているため、各種制度が利用できます。 精神障害者保健福祉手帳を取得されれば、障害者雇用での就職機会も広がります。 障害者自立支援法における福祉サービスを受けられる場合もあります。 その他、医療費の助成や障害年金も受けられます。 詳しくは、主治医や社会福祉士にご相談ください。

臨機応変な行動が難しい方は、毎日の行動をパターン化するなど、生活上で工夫することも有益です。 また、正しく物事を認識するのが困難な方には、無理に理解させようとせず話題を変えるなど、周囲の協力も不可欠です。

高次脳機能障害の認知と理解が深まり、患者さんやご家族がよりストレスの少ない生活を送ることができる社会の実現を望みます。

脳神経外科

▲ ページの先頭へ