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認知症に伴う行動異常とその対応

2013/09/06 7階多目的ホール 第32回脳と神経の勉強会

第32回脳と神経の勉強会のようす

認知症の症状には、中核症状と周辺症状と言われるものがあります。

中核症状は、関心を持てない、集中力を保てない、意欲が出ない、ここがどこで今がいつなのか分からない、 といった認知機能の障害です。 程度の差はありますが、すべての患者さんに見られ、疾患の進行とともに悪化します。

周辺症状には、妄想、昼夜逆転、徘徊、攻撃的になるなどの行動異常がありますが、 症状が見られない患者さんもおり、疾患の進行と比例しません。 患者さんのご家族から困っていることとしてよく伺うのは、この周辺症状です。 そして、これらの行動に対する周囲の否定的な言動が、さらに行動異常を起こしやすくしてしまいます。


暴言・暴力

暴言・暴力

「だめ!」という注意や禁止、否定の言葉に反応、妄想、介助への抵抗が背後に。 強く制止するのはマイナス効果です。 落ち着いてゆったりとした気持ちで接しましょう。

徘徊

徘徊

記憶や方向感覚の不良、不安や恐怖心など原因はさまざま。 肉体的・精神的に安心できる場を求める心理も背後に。 入院・入所後に始まった、多くなった場合、安心できる環境づくりについて考えてみましょう。

もの盗られ妄想

もの盗られ妄想

不安や心細さが、思い込みへと増強します。 盗んだのは介護者と思い込むことが多く、介護する側にとって辛い妄想です。 他のことを言って気を紛らわせる、一緒に探す、少し時間を置いて「あったよ!」と言って見せるなど、否定しない対応を。 現実を突きつけて逃げ場をなくしてしまうのはマイナス効果です。

替え玉妄想

家族がニセ者に置き換わる妄想で、多くはありませんがまれにいらっしゃいます。 記憶障害、心細さから「家族にいてほしい」という心理が原因に。 少し時間をおいて「ただいま」と帰るなど、否定や説得はしないようにしましょう。

帰宅要求

家にいるのに「家に帰る」と荷物をまとめたりします。 不安が強く、安心できる場所へ行きたい心理が背後に。 部屋になじみのものを置くなど、安心して暮らせる環境を整えて。


異常だと思える行動の背後には、不安や心細さ、安心できる場所に行きたい、 頼りにしている人を拠りどころにしているなどの心理が隠れています。 これらの行動は、訴えたいことを言葉にできない患者さんからのメッセージなのです。

介護するご家族は、患者さんの変化に戸惑い、言動に苛立ち、「なぜ私だけが…」と孤独感に襲われ、 「きつい言葉を発してしまった」と自己嫌悪感に苛まれます。 認知症という病気を理解し、ご家族が病気であることを理解しましょう。 そして、“自分だけじゃない。けど、自分もがんばっている”と自分自身を認め、勇気づけることを忘れないでください。


脳神経外科・もの忘れ外来担当医  楠木司

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