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「糖尿病と慢性腎臓病(CKD)」「糖尿病性腎症の食事」

2014/6/25 7階多目的ホール 第35回糖尿病勉強会


糖尿病と慢性腎臓病(CKD)

泌尿器科部長・透析部長 近澤成和


泌尿器科部長・透析部長 近澤成和
透析導入の原因第一位は、糖尿病性腎症

2013年12月現在、全国で透析を受けている方は31万人超。 透析を受ける原因として最も多いのは、糖尿病性腎症。 次いで、慢性腎炎となっています。 そして残念なことに、原因不明という方が1割ほどもいらっしゃいます【下グラフ】。

透析導入患者の主要原疾患別患者数の推移

透析導入患者の主要原疾患別患者数の推移

一般社団法人日本透析医学会「図説 わが国の慢性透析療法の現況」2013年12月31日現在


糖尿病性腎症は、糖尿病の三大合併症の一つで、血液をろ過する働きが悪くなるなど腎臓の機能が低下した状態です。

腎臓は機能が低下してもすぐには症状が現れません。 しかし、一旦悪くなると自然には治りにくい臓器です。 症状がないからと放置すると、末期腎症になり透析が必要となってしまいます。 透析患者の増加は、医療費の面でも大きな問題となっています。 早く病気を見つけ、早く治療を始めることが重要です。

CKD(慢性腎臓病)とは

糖尿病性腎症や慢性腎炎など慢性的に経過する腎臓病が原因で、 腎臓の働きが悪い状態が3ヶ月以上続く状態を、CKD(慢性腎臓病)といいます。 日本の成人人口におけるCKDの患者数は、約1330万人(12.9%)と推計されています。

CKDの方はそうでない方に比べ、心疾患の発症率が3倍近く高くなることが分かっています。

CKDの診断

尿、血液、血圧、画像、検査、病理などの検査結果から総合的に診断します。

自覚症状がない初期段階でも、次第に尿中のアルブミン量が増え、たんぱく尿がみられるようになります。 また、年齢・性別と血液検査によるクレアチニン値によって算出される、腎臓の働きの状態(eGFR)が低下します。 病院で受け取られた検査結果表に「たんぱく尿(尿蛋白定性)」、 「クレアチニン(CRE)」や「eGFR(推算GFR)」があれば、数値の経過をご覧になってみてください。

CKDの予防
生活習慣改善でCKD予防

生活習慣改善でCKD予防

CKDの発症には、糖尿病、高血圧などの生活習慣病による動脈硬化が関与します。 メタボリックシンドロームの方は、そうでない方に比べてCKDになりやすいことが分かっています。 

悪くなった腎臓を治す特効薬はありません。 禁煙、飲酒は適量まで、減塩、適度な運動など、生活習慣を改善する。 定期的に検査を受け、自分の体の状態を把握する。 発症の危険因子をできるだけ排除し、予防、悪化スピードの緩和に努めましょう。


糖尿病性腎症の食事

管理栄養士 吉良淑子


エネルギー必要量に対する3大栄養素の割合

エネルギー必要量に対する3大栄養素の割合

糖尿病の方には糖尿病食の指導をさせていただいていますが、腎機能の低下がみられるようになると、腎臓病食に切り替えます。 糖尿病食と腎臓病食の大きな違いは、たんぱく質。 たんぱく質の摂りすぎは腎臓を疲れさせるため、制限が必要なのです。

糖尿病性腎症の方の食事療法の基本は、血糖と血圧のコントロール、たんぱく質の制限です。 腎機能がさらに低下すると、カリウム・ナトリウム・リンの制限が必要になってきます。

糖尿病に加え腎臓病をも考慮した食事を考えるのは、負担に思われるでしょう。 しかし、生きていく上で必要な栄養は変わりません。 栄養素はそれぞれが影響しあいながら働くため、バランスよく摂ることが大前提。 難しく考えすぎず、ご自分の食事の内容を振り返り、摂りすぎているものや少ないものを、必要量を目安に加減しましょう。 その上で、状態によって腎臓に負担をかける食材を避けます。 制限することによって不足しがちなエネルギーは、治療用特殊食品を利用することで補助すれば、食事療法はより簡単になります。

疑問や不安に思われることがあれば、お気軽にご相談ください。

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