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腰痛に対する脊髄硬膜外刺激療法

2013/04/27 高知市文化プラザかるぽーと小ホール 市民公開講座「慢性的な腰痛にお悩みの方へ」

脊髄硬膜外刺激療法とは

市民公開講座 慢性的な腰痛にお悩みの方へ「腰痛に対する脊髄硬膜外刺激療法」のようす

痛みは、その部位の信号を司る脊髄を通って脳に伝わります。

脊髄硬膜外刺激療法は、脊髄に微弱な電気刺激を与えて信号を伝わりにくくすることで痛みを和らげる対症療法です。 慢性的な腰痛の軽減が目的で、痛みの原因となっている疾患の根本的治療ではないことをご理解ください。 椎間板ヘルニア、脊柱管狭窄症、変形性腰痛症、腰椎すべり症などによる 腰痛・間欠性跛行(少し歩くと足に痛みやしびれが出て歩行困難となり、しばらく休むとまた歩行できる)の症状、 帯状疱疹(ヘルペス)後の神経痛、外科手術後に残存した痛みなど、 治療しても痛みが残り日常生活に支障がある場合に適応となります。 また、前傾姿勢になることが多いパーキンソン病患者さんに生じやすい腰痛にも適応となります。

当院脳神経外科では、パーキンソン病等に対する脳深部刺激術をこれまでに300回以上行なっています。 脊髄硬膜外刺激療法とは刺激部位が違いますが、同じ機材で同じ原理を利用した治療であるため、 これまでの経験を活かして脊髄硬膜外刺激療法に取り組んでいます。

術後の調査では、当院で治療を受けられた方のうち7割以上の方が、術前に比べ痛みが6割以上改善したと回答されています。

手術は2つの方法があります

腹部に埋め込んだ刺激装置を写したレントゲン写真

脊髄に留置した電線と腹部に埋め込んだ
刺激装置を映したレントゲン写真

一つ目は、1週間電気刺激を行ないその後電極を抜去する手術です。 局所麻酔による60〜90分程度の手術で、患者さん自身に位置を確認しながら脊髄に細くやわらかい電線を挿入し留置します。 その後1週間、1日9時間の電気刺激を続け、腰痛が軽減すれば治療は成功、電線を抜去し退院となります。 どの程度の期間有効かは人によって異なりますが、通常数週間程度、中には1年程度効果が持続する方もいらっしゃいます。

二つ目は、体内に刺激装置を埋め込んで繰り返し電気刺激を行なうための手術です。 一つ目の手術と同様に電線を留置し、一週間後に全身麻酔による30分程度の手術で、刺激装置を皮下脂肪の中に埋めます。 埋め込み後は、設定範囲内であれば患者さん自身が電圧を調整することが可能です。 刺激装置は充電式と非充電式のものがあります。


メリット・デメリット

比較的簡単かつ安全な手術で、一つ目の手術での効果をみて二つ目の手術をするか判断できる、 電源をオフにしたり電線を抜去したりすれば元に戻せるなどのメリットがあります。

デメリットは、放射線や電磁波を利用した検査や治療(レントゲンやMRI、尿管結石破砕術など)に支障がある、 金属探知器に反応する、などです。 過激な運動は控えることが望ましいですが、日常生活に制限はありません。 合併症として出血や感染などがありますが、非常にまれです。 1割ほどで電極位置のずれや電線の断線などが見られ、調整や交換のため再手術が必要となる場合があります。

脳神経センター長  清家真人

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