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認知症のくすり

2013/03/01 7階多目的ホール 第26回脳と神経の勉強会

第26回脳と神経の勉強会のようす

認知症の治療は、服薬により進行を遅らせることが基本です。 服薬した場合、服薬しない場合に比べ1年以上進行を遅らせられるというデータもあります。 進行を緩やかにできれば、患者さんはその人らしい生活をより長く続けられ、介護するご家族の負担も減らせることができます。 認知症を疑う症状がみられたら、専門医を受診し、認知症の分類診断を受け、早期に適切な治療を開始することが重要なのです。

最近、薬が新たに承認され、服薬治療の選択肢が増えました(下表)。 かといってあれもこれもと薬を増やすのは、その人らしさを失くしてしまうことになります。 何のためにこの薬を処方するのか、患者さんに処方するときは原点に戻って考えます。

認知症には、脳の神経細胞が壊れることによって、 直接起こる中核症状(記憶力・判断力・問題解決能力の障害など)といわれるものと、 周囲の人との関わりのなかで起きてくる周辺症状(幻覚・妄想・暴力・徘徊など)があり、 下表の薬は中核症状に対する治療薬です。

抑肝散などの漢方薬も認知症状の抑制に効果があると言われていますが、 これらは薬の作用として不明な点が多く、その効果について説明することができません。 また、漢方薬は中核症状に対する治療効果はなく、周辺症状に対する治療薬の一つです。

しかし、認知症の方を介護するご家族が困っていることとして多く聞くのは、 怒りっぽい、暴力的になったなどの周辺症状であることも事実です。 ご家族の介護の負担を軽減するためには、漢方薬服用という選択も有益と言えるでしょう。

アルツハイマー型認知症治療薬の一覧
一般名・販売名
効能・効果 特徴 副作用
ドネペジル
アリセプト
認知症状の
進行抑制
歴史が長くデータが蓄積されており、安全で使いやすい。無関心・無意欲に対して効果あり。もともと怒りっぽい方に投与すると、興奮しやすくなる傾向がある。協調性が改善する人が多い。
消化器症状(嘔気・嘔吐・食欲不振)、精神症状の増悪、除脈、意識消失発作
ガランタミン
レミニール
軽度〜中等度の 認知症状の 進行抑制 ADL(日常生活動作)改善のデータあり。1日2回服用しなければならず、薬を管理する家族にとっては負担増となる可能性。 あくまで使用した印象だが、ドネペジルよりは出にくい印象
リバスチグミン
イクセロンパッチ・
リパスタッチパッチ
軽度〜中等度の 認知症状の 進行抑制 ADLの持続効果が高い。貼付剤で、有効成分が皮膚から血管を通って脳へ送られるため消化器系の副作用がない。服薬管理が容易。 皮膚のかゆみ、人によっては赤み、腫れ
メマンチン
メマリー
中等度〜高度の 認知症状の 進行抑制 他の薬剤とは作用するしくみが異なる。そのため、他剤との併用ができるメリットあり。神経細胞の保護作用、精神症状の波の安定化が図りやすい。 過鎮静・傾眠・めまい

脳神経外科・もの忘れ外来担当医  楠木司

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