トップ > 病気の知識 > 過去の勉強会一覧 > 頭部外傷について
頭部外傷について
2013/01/11 7階多目的ホール 第24回脳と神経の勉強会
思いがけず強い力で頭をぶつけた場合、生命の危険にさらされることも少なくありません。 手足の麻痺・言葉の障害・やる気・感情といった高次脳機能障害が残ることもあります。 ここでは、頭をぶつけたときに注意しなければならないポイントをご紹介します。
頭部外傷の種類
外傷が及ぶ範囲により、主に以下の3つに分類されます。
皮膚:皮下血腫(たんこぶ)、切り傷
たんこぶは1〜2週間で自然に改善することが多いですが、なかなか改善しない場合は病院を受診してください。 頭皮は血流が多いため、裂けると出血量が多くなることがあり、その場合は病院で縫合する必要があります。
頭蓋骨:骨折
複雑骨折や頭の内側に落ち込んだ骨折は、手術の必要があります。 また、耳や鼻の穴からサラサラとした血液混じりの液体が出てきた場合には、緊急に病院を受診してください。
脳:脳挫傷・くも膜下出血など
次のような症状を伴う場合は、すぐに病院を受診してください。
- 頭痛がどんどんひどくなる
- 吐気・嘔吐を繰り返す
- 意識がもうろうとしている
- 物が見えにくい
- 手足が動かしにくい
- けいれんを起こす
ご家庭で知っておいてほしいこと
頭部外傷は、時間との勝負
重症なものは1時間(通常20分)以内に症状がでます。 頭蓋内で変化の起こりうる6時間を過ぎて受診してもあまり意味のないことが多いので、 強くぶつけた場合はなるべく早く受診した方がよいでしょう。 高齢者ではまれに、2〜3日経ってから症状がでる場合もあるため注意が必要です。
吐いたら危ない
6時間(通常1時間)以内に盛んに嘔吐する場合、頭の中に出血などがある可能性があります。 これは、脳挫傷や出血により脳が圧迫され脊髄に向かって圧がかかり、脳幹部の嘔吐中枢を刺激するためです。
高齢者は、脳の委縮によってできた空間に圧が逃げるため、はっきりと症状がでないことがあるので注意を要します。 慢性硬膜下血腫合併の可能性
特に高齢者や1歳くらいまでの乳児は、受傷後3週間以上経過してから合併することがあります。 高齢者では2〜3ヶ月後に起こることもあり、頭痛・嘔吐・しびれ・片麻痺・見当識障害などが出始めたら受診した方がよいでしょう。
脳震盪
意識障害もなくCTで出血などがなければ、脳震盪自体は心配ありません。
ご家庭での一般的な処置
以前は縫合部や傷口は濡らしてはいけないとされてきましたが、ここ十数年のうちに創傷治癒・感染の概念が変わり、 むしろ傷は洗った方がよいと言われています。 ただし、これは日本の水道水のように水質のよいものであることが前提です。
擦過傷(擦り傷)に対しても、10年ほど前から“洗浄と密閉”が早く治る秘訣と言われています。 傷口を防水のシートや絆創膏で密閉し、体内と同じような環境にします。 ずれないよう工夫は必要ですが、食品用ラップでも代用できます。
脳神経外科