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脳卒中の後遺症 手足の筋肉のつっぱりの治療について

2012/11/02 7階多目的ホール 第22回脳と神経の勉強会

近年は医療がめざましく進化し、脳卒中により死亡する患者さんは減少傾向にあります。 しかし、その一方で、手足のまひや言語障害などの後遺症が残る患者さんは増えています。

11月の“脳と神経の勉強会”では、脳卒中の後遺症の一つ、手足の筋肉のつっぱり(痙縮・けいしゅく)に対する治療について、 いくつかの治療法の中から最近加わった新たな治療法、『ボツリヌス療法』をご紹介しました。

参加された方の中には、ボツリヌス療法を既にご存じの方も、初めて耳にする方もいらっしゃいましたが、 皆さんメモをとりながら真剣な表情でお聞きになり、 講演終了後は、「自分のような症状の場合にもボツリヌス療法は有効か?」 「筋肉がつっぱった状態が長年続いている場合でも効くのか?」 「何回も続けて治療を受けて副作用は大丈夫か?」などたくさんのご質問が寄せられ、 新たな治療法への関心の高さを感じました。

手足の筋肉のつっぱり

脳卒中の後遺症のひとつに、手足の筋肉が緊張しすぎて、指が握ったままの状態になって開きにくい、 肘が曲がり、服の脱ぎ着がしにくい、足先が足の裏側の方に曲がってしまい、歩きにくいなどの症状があります。

痙縮の状態が長く続くと、筋肉が固まって関節の運動が制限され、日常生活に支障を来たすようになったり、 リハビリテーションの障害となることもあるため、痙縮に対する治療が必要となります。

ボツリヌス療法とは

痙縮の治療には、現在、内服薬、神経ブロック療法、外科的療法、神経ブロック療法などがありますが、 最近新たにボツリヌス療法が加わりました。

食中毒の原因となるボツリヌス菌が作り出す天然のたんぱく質を有効成分とする薬剤を、痙縮している筋肉内に注射する治療法です。 2010年よりはじめられた治療ですが、世界80カ国以上でその効果が認められ、広く使用されています。 日本では、手足の痙縮の他いくつかの疾患に対して認可され、これまでに9万人以上の方がこの治療を受けています。

注射は痙縮のみられる筋肉に行ない、患者さんによって部位や量、回数なども異なります。 効果の持続期間にも個人差があるため、適切な間隔をあけて繰り返しボツリヌス療法を受ける必要があります。

まずは医療機関を受診し医師にご相談ください。

期待できる効果

ボツリヌス治療によって手足の筋肉のつっぱりやこわばりを和らげることで、次のような効果が期待できます。 通常、効果は、注射後2〜3日目から徐々に現れ、3〜4ヶ月ほど持続します。

  • 日常生活動作が行ないやすくなる
  • リハビリテーションが行ないやすくなる
  • 関節が固まって動きにくくなったり、変形したりするのを防ぐ
  • 痛みを和らげる
  • 介護の負担が軽くなる
副作用

副作用として、注射部位が腫れたり赤くなったり痛くなったり、脱力感があるなどの症状が現れることがありますが、 多くは一時的なものです。

受ける前の注意点

次のような方はボツリヌス療法を受ける前に、必ず医師にお申し出ください。

現在ボツリヌス療法を受けている方、または過去に受けたことのある方。 この薬に対するアレルギーのある方やアレルギー体質の方。 喘息など慢性的な呼吸器疾患がある方。 全身性の筋力の脱力を起こす病気がある方。妊娠している方、妊娠している可能性のある方、授乳中の方。

よりよい生活を送るために

ボツリヌス療法で、痙縮が和らぐことで、日常生活で行なう動作やリハビリテーションが行ないやすくなり、 より効果的にリハビリテーションを進めることができ、より快適な日常生活を送ることができるのです。

ボツリヌス療法を受けながらリハビリテーションを続け、少しずつ機能の回復を目指しましょう。

脳神経外科

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