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糖尿病

私たちの体の細胞は、血液中のブドウ糖を取り込んでエネルギーにしています。 この作用に重要な働きをするホルモンが、膵臓で作り出されるインスリンと呼ばれるものです。 このインスリンの働きが低下すると、血液中の血糖値が高くなったり、尿に糖がもれたりします。 この状態が継続すると糖尿病です。

日本人の糖尿病のほとんどは、遺伝的要素に過食や運動不足、ストレスなどが加わり、発病するものです。

症状

多少血糖値が高いぐらいでは、自覚症状はほとんどありません。 健康診断や検診で見つかって来られる方もおりますが、 自覚症状が無いだけに、何かの症状が出てかなり状態が悪くなってから来られる方もかなりおられます。

しかし糖尿病を放置していると、神経や血管、そして様々な臓器に障害をもたらします。 全身の神経の働きが鈍り、手足にしびれ、麻痺、痛み等が現れます。 また網膜症を併発し、年間約3,000人の方が失明し、成人後の失明の一番の原因となっています。 さらに腎臓の機能も低下し、年間約10,000人の方が糖尿病による腎症が原因で 人工透析を受け始めており、 人工透析の一番の原因となっています。

糖尿病の本当の怖さは、この合併症なのです。

治療法

糖尿病の治療は、合併症の発症・進行を抑えるために血糖コントロールがすべての基本となります。

食事療法

まずは食事療法で、余分なエネルギーを摂らないようにします。 その方の身長、体重、年齢、仕事や運動量から一日の摂取カロリーを決めます。 軽い仕事の方で1,600Kcal位になります。

運動療法

次に運動療法で、体内に余分に溜まったエネルギーを消費します。 日常できるものならどんな運動でもかまいません。 手ごろなものとして、歩くことがよいと思います。 うっすらと汗をかく位のスピードで40〜60分程度、週3回は実施しましょう。

薬物療法

7割以上の方が、上記2つの療法で血糖コントロールが可能です。 しかしこれでコントロールできないときに、血糖降下薬を内服します。 膵臓を刺激し、インスリン分泌を促すタイプのもの、細胞でのインスリンの働きを強めるタイプのもの、 腸内の糖の消化吸収を遅らせるタイプなどの薬があり、糖尿病のタイプや病状など、さまざまな要因を総合して使い分けています。

インスリン療法

そして、これでもコントロールが困難なときに、インスリンを注射で補充するインスリン療法を用います。 インスリン注射にはたくさんの種類がありますが、 注射後ごく短時間で作用を発揮する「超速効型インスリン」や 注射後24時間にわたり効果が持続する「持効型インスリン」が多く用いられるようになってきています。 最近では、よりよい血糖コントロールを目指し合併症の発症や進行の予防につなげるよう、 内服薬でのコントロールが難しくなった患者さんに対し比較的早い時期に インスリン療法の併用が行われるようになってきています。

最近、1日1〜2回の内服や注射ですみ、単独で使用した場合低血糖が起こりにくいという 「インクレチン関連薬」が新たな治療薬として注目されています。 ただし、糖尿病の型などによっては使用できない患者さんもいらっしゃいますので、 主治医にご相談ください。

しかしながら、昔から今日に至るまで変わらず重要なことは、食事療法と運動療法をきちんと守ることです。 いかに新しい薬剤ができても、この2つがおろそかになってはどの薬も有効に作用しませんし、 良好な血糖コントロールを維持することは困難です。

生活の質向上のために

糖尿病治療の目標は、合併症を予防し、健康な人と変わらない生活の質(QOL)を得ることです。

厳格な血糖コントロールにより、糖尿病特有である細小血管合併症(網膜症、腎症、神経症)の 発症や進展が予防されることは、約20年前からの研究で知られています。

しかし、動脈硬化病変である大血管合併症(虚血性心疾患、脳血管障害、下肢の閉塞性動脈硬化症など)については、 厳格な血糖コントロールだけで予防できるという証拠に乏しく、食後の高血糖を抑えること、 治療による低血糖や体重増加をできるだけ少なくすること、発症早期より治療を行うことが重要であると考えられています。 また、2型糖尿病患者さんにおける冠動脈疾患(虚血性心疾患)の危険因子としては、 血糖値よりも悪玉コレステロール(LDL-C)の値が重要であるとの報告もあり、 さらに大血管症抑制には血糖だけでなく、脂質、血圧などを包括的にコントロールすることが重要であるとの 注目すべき研究結果も報告されています。

糖尿病の治療においては、さまざまな新しい知見、薬剤が生み出されており、 一人一人の患者さんにあった治療を追求していくことが重要になってきていると思います。

治療によって血糖値が下がっても、ちょっと油断すると血糖値は再び高くなってしまいます。 一度糖尿病になってしまうと、完治することはありません。 生活習慣を改善し、適切な血糖コントロールを行うことにより、糖尿病とじょうずにつきあい、 一生治ったと同じ状態を保つことが大切です。

内科 西岡真理子

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